2018年5月11日金曜日

出産報告(その2):「数分おきに気絶しながら、全力でケツをテニスボールで押すマン」

命のテニスボール

その1:エッ、我々が決めていいの?

AM3時ごろ 陣痛が強くなりだす


感覚は相変わらず4~5分程度だが、陣痛の痛みが強くなってきた様子だ
前回申し上げたとおり、陣痛室にいる間、胎児の心拍と「Toco値」と呼ばれる数値をずっとモニタリングしていた

Toco値は子宮の収縮を表しているらしいが、分かりやすく言えば痛みのバロメータである
何事もない状態が10台、30を超えるとやや痛く、50を超えるとかなり痛い、ピークは120くらい、といった感じらしい
これをグラフに書き出して陣痛の波を可視化しているようだ

このToco値が、病院についた頃は高くても30少々だったのだが、最大値が50を超えるようになってきた
嫁のリアクションもあからさまに変化し、30程度なら顔をしかめて耐えていたのだが、痛さのあまり声を上げる程になっていた

嫁の腰をさすることぐらいしかできず、オロオロする私
そこへ一つのアイテムが登場した




救世主テニスボール


陣痛が来ている間、肛門にテニスボールを押し当てるとよい、というのは、知識としては何となく知っていた
が、実際それが何の役に立つのか、いまいちイメージできずにいた

そんな私へ渡される一個のテニスボール
看護師は言う「これを、こう(実演)、お尻へ押し当ててください」
嫁も「いい! すごく楽!」と言っており、よく分からないがかなりの効果があるようだ

ということで私は以降、「数分おきに全力でケツをテニスボールで押すマン」と化した

出産後の嫁いわく、「陣痛が来ると内蔵が出そうになるので、それを抑えてくれるとかなり楽、ボールが無かったら全部の内臓が尻から飛び出して死んでいた」そうだ


AM4時ごろ 急に破水


テニスボールでケツを押したり離したりしていた頃、急に嫁が、「アッ……いま破水したかも」と言い放つ
嫁は例によって「でも違う気がするからもうちょっと様子を……」等と続けたが、この期に及んで何を言うのか
冷静な私は無視してナースコールを押した

程なく助産師が現れ、確認をするため私はカーテンの外へ追いやられる
「あぁ破水しているっぽいですねー……」といった会話の最中、バシャッというモロな感じの音がして、完全に破水したことが音だけで理解できた


これ以降、陣痛のペースこそ変わらないものの、痛みはさらに上昇していく
Toco値は80を超え、ときには90に迫る勢いであった

あの時点で帰宅していなくて本当に良かったと心から思う
家で破水してこの有様であれば、たぶん玄関からマンション入口まで移動する事もままならなかっただろう


睡魔との戦い、というか負けていた


このあたりで私の眠気が限界を超え、意識が朦朧とし始める
嫁に頑張って貰っていて大変申し訳ないが、本当に眠さには弱くて、若い頃から貫徹ができなかったのだ

陣痛が来るたびに嫁が呻くので、それを察知して目を覚まし、テニスボールを尻に全力で押し当てる
それ以外の時間は、軽くボールを押し付けながら寝ていた、というか、気を失っていた

私は「数分おきに気絶しながら、全力でケツをテニスボールで押すマン」となっていた


これが実に4時間ほど続くことになる
その間、2回ほど嫁がトイレに立ったり(多少無理しても行ったほうがお産が進むらしい)、そのスキに破水で濡れたシーツを交換したり、当日は平日だったので勤務先に休みの一報を入れたりしていたが、それ以外の時間はずっと陣痛と戦っていた

終わってしまえば「たった3時間」であり、これが数十時間にも及ぶ出産があることも知ってはいる
しかし、特に今後の方針を示されるでもなく、いつまで続くか分からない陣痛の戦いは精神的にけっこう参った
いや、私の大変さなど知れている
嫁の苦痛はこれの億倍はあったであろう

しかも彼女はマジに不眠不休だ、本当に感謝しかない


夜が明けた頃、医師が現れて事態は展開しはじめる
その3へ続く

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