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地味だが味のある表紙 |
ちばてつや氏による18年ぶり(!)の新刊「ひねもすのたり日記」を購入した
1200円という強気の値段設定と、地味め(失礼)な表紙がかなり人を選ぶ感があるものの、けっこう良い買い物をしたと思ったので記しておきたい。
内容はタイトルのとおり、ちば氏のコミックエッセイだ
1話4ページずつ、フルカラーで描かれている
テーマは多岐にわたり、まさに「思いつくまま描いた」感じがするが、おおむね以下の3種類が時系列順不同に並んでいる
1. 最近の出来事から、自身の老いを自虐的なユーモアで描いたもの
2. 同世代の大御所漫画家仲間たちによる交流
3. 戦時中~終戦後における、幼少期の記憶
どれか一つでも単体の作品にできそうなテーマなので、お得感がある
1.はまさしく「おじいちゃんあるある」といった感じで、笑える中にもほのかな哀愁を感じるバランスがいい塩梅だ
2.はズラリと並んだ有名漫画家たちの仲良しぶりがホッコリする
藤子A、松本零士、永井豪といった豪華メンバーが、まるでモブキャラのように溢れている画が多くシュールだ
そしてなぜか、さいとうたかをのキャラが妙に立っている
故手塚治虫や水木しげる先生を偲ぶくだりもシンミリしてよい
3.は、表紙にもなっているとおり、きっとこれが本作のメインコンテンツなのだろう
戦時中の満州に産まれた幼少時代から、敗戦により街を追われ、家族とともに数百キロもの道のりを徒歩で移動し、引揚船とその先の日本を目指すストーリーだ
食糧不足、中国人やロシア兵による暴行・略奪や友人の死などが描かれ、他のテーマと比べても露骨にシビアな内容が続く
しかしそのような状況を、ちば氏は「まるで家族旅行のようで楽しかった」と振りかえる
心にくるものがある
当然、つらく悲しい事の方が多かったはずだが、ひとりの子どもが戦争という現実の中で何を感じていたのか
家族がみんないて、母の握ったおにぎりを食べる事ができる
小さな子どもにとってこれ以上の幸せは無いのだろう、と感じさせられてしまう
自分も、子どもにそう思ってもらえる家族をつくりたいと思った
重めの戦争編を、合間に挟む他のエピソードがいい感じに中和しており、読みやすい1冊だ
雑誌で連載中の作品なので、順調であれば1年おきくらいに新刊が出るだろう
忘れずにチェックしたい
それにしても、80を過ぎて、目の病を患い、スタジオを解散し、もはや隠居モードに入っていたちば氏を強引に説得して漫画を描かせた編集もたいがいである
まぁお陰でよい作品に出会えたのだから読者としては感謝なのだが……
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